NIWAKAな綴り士

危険なモノ 奇妙なモノ そういったことに共感し思いついたことを綴ります

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ACT Ⅲ   天竺鼠:ギニーピッグ ―01―

すべてを先生と思おう。 そうすることで僕は精神的安定を保っていた。 そうでもしなければ 毎日道の真ん中に新しい血溜まりが出来る 夜の町なんか歩けない。 歩くと言っても道を闊歩する訳じゃない。 住宅の隙間にある塀に上って、 区画を縫うように進んでい…

ACT Ⅱ   始まり ―11―

乱雑なノックと絶え間ないインターフォンが響く中、 希一は靴を脱いで居間に上がった。 ふと右側の光源に気が付く。 入ってすぐの壁に取りつけてあるドアフォンだ。 そのモニターが点いている。 外の連中が余りにもカメラに近づき過ぎているので、 明と暗を…

ACT Ⅱ   始まり ―10―

害意、殺意、もしかしたら食欲。 とにかく邪念に満ち満ちた醜貌と 唸り声に囲まれたほんの十数メートルは はてしなく感じられた。 生涯で初めて出会った 本物の意味をもった敵をかいくぐり マンションの入り口に飛び込むと、段を飛ばしで階段を駆け上がる。 …

ACT Ⅱ   始まり ―09―

鉄で出来た巨大な風船が破裂したような 〝バーン!!〟 という轟音と同時に機体が爆発した。 一拍遅れて希一は衝撃波に顔を叩かれる。 知らぬ間に顔をかばっていた腕の隙間から 飛行機事故現場を覗き見た。 最早大きな火の玉となったヘリは 戸建てのひたいに…

ACT Ⅱ   始まり ―08―

自宅が目に入った途端、 焦りが足にきた希一の歩幅は大きくなった。 それは荘輔もいっしょのようで、 周囲よりもマンションを眺めることに注意が傾いている。 残り三つの十字路を越えれば安全地帯に逃げ込める。 そう気が緩んだとき、希一の耳が物音を拾った…

ACT Ⅱ   始まり ―07―

連中二人の息づかいまで耳が拾い始めた瞬間――。 ドカッ! 砂袋を殴りつけたような衝撃音と共に、 少年の一人が棒が倒れるように床に突っ伏した。 よく見えるようになった背中はジャージが張り付いていて、 肩甲骨辺りが不自然に窪んでいる。 「何やってんの…

ACT Ⅱ   始まり ―06―

「あいつらは走らない。いくら早くても小走り程度だ。 普通に走れば追いつかれない」 返事をする間もなく走り出す荘輔(そうすけ)を 希一(きいち)は追いかけた。 自分のすぐ後ろでにわかに唸り声が大きくなる。 その苦悶にも似た喉笛の響きは、 「待て! …