2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧
冷蔵庫をそっと閉じてから上げた目が 玄関のドアに吸い寄せられた。 ドアフォンに視線を移した希一は、 床の軋む部分を避けて歩を進めモニターを点ける。 ふっと目の前が明るくなり、 川口だった者の暗い顔が画面に映し出された。 口の周りに付いている血は…
どうもこんにちは 如月了一です シカバネがACTⅢに入ったのに 急に別の小説を挟んでしまって申し訳ありません こちらのyoutube動画を見ていましたら、どうしても書きたくなってしまったのです ↓ https://www.youtube.com/watch?v=rQAljCCWfCk まったく人の…
後日……。 「申し訳ありません。 今日のところは紹介したい品がございませんので」 店に顔を出した僕を見るなり易者は目を細めて口ひげをなでた。 「いえ、そうじゃなくて、先日買った文鎮のことなんですが」 椅子につく僕に易者は嫌そうな顔をする。 「先に…
読み終わってようやく喉が渇いているのに気が付いた。 流し台の棚に置いてあるグラスに水道水を注いで飲み干す。 僕はほうっと一息ついた。 「世の中には自分勝手なやつがいるなぁ」 つまりは、あの石膏でできた文鎮は手紙に 書いてあったコリンナのものと考…
ある日 そう、あなた方が人生最悪の時を迎えたあの日 とうとう私は我慢できなくなってしまったのです あの日は、コリンナの誕生日でしたね あなた方夫婦が出掛けた後、 私は電話でコリンナを呼び出しました 〝 お母さんから植木の注文を受けた 持って帰れる…
清書作業が終わり、時計を見やると三時間が経過していた。 外はもう真っ暗だ。 いつのまに使っていたのか、学生時代の和訳辞書が膝の上で開かれている。 まったくこいつは……。 僕はタイプライターに目を落としながら大きく息をついた 出来上がった文章を読み…
「家に帰ってから開けたほうがいい。 君が思っている以上に汚い物が入ってるからね」 そう忠告されて言う通りにした僕は、 自宅のデスクの椅子に腰を下ろしている。 ポケットの底に沈み込んでいた文鎮を取り出し、 何となくパソコンの脇に置いてみた。 ……………
広く年輪を重ねた木目テーブルの上、 今し方ほどかれた黒色の包み袋の真ん中に 小さく、白く、何より美しい物体が置かれている。 それを〝文鎮〟だと紹介したこの店の店主である易者に促されて、 僕は手に持ってみた。 すると、 なんとも頼りない重さを手の…
希一達は豊富にある食料にほとんど口を付けなかった。 というよりは喉を通らなかった。 世界の終わりを見たあの日、 荘輔がドアフォンの音量をゼロにしてインターフォンを鳴らなくしたものの 相変わらずノックだけは続いた。 籠城を始めて三日三晩その音に悩…
拳一個分すかした窓を通って シカバネ共の息遣いと生臭い夜風が一緒に吹き込んでくる。 缶詰の鯖を半分食べたところで 希一の胃は残りを受け付けなくなった。 食べ残しにラップをして冷蔵庫にしまう。 窓に歩み寄った希一はカーテンの隙間から外をうかがった…