NIWAKAな綴り士

危険なモノ 奇妙なモノ そういったことに共感し思いついたことを綴ります

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ACT Ⅲ   天竺鼠:ギニーピッグ ―04―

冷蔵庫をそっと閉じてから上げた目が 玄関のドアに吸い寄せられた。 ドアフォンに視線を移した希一は、 床の軋む部分を避けて歩を進めモニターを点ける。 ふっと目の前が明るくなり、 川口だった者の暗い顔が画面に映し出された。 口の周りに付いている血は…

現況報告

どうもこんにちは 如月了一です シカバネがACTⅢに入ったのに 急に別の小説を挟んでしまって申し訳ありません こちらのyoutube動画を見ていましたら、どうしても書きたくなってしまったのです ↓ https://www.youtube.com/watch?v=rQAljCCWfCk まったく人の…

ライターと易者 小さな文鎮 ⑥

後日……。 「申し訳ありません。 今日のところは紹介したい品がございませんので」 店に顔を出した僕を見るなり易者は目を細めて口ひげをなでた。 「いえ、そうじゃなくて、先日買った文鎮のことなんですが」 椅子につく僕に易者は嫌そうな顔をする。 「先に…

ライターと易者 小さな文鎮 ⑤

読み終わってようやく喉が渇いているのに気が付いた。 流し台の棚に置いてあるグラスに水道水を注いで飲み干す。 僕はほうっと一息ついた。 「世の中には自分勝手なやつがいるなぁ」 つまりは、あの石膏でできた文鎮は手紙に 書いてあったコリンナのものと考…

ライターと易者 小さな文鎮 ④

ある日 そう、あなた方が人生最悪の時を迎えたあの日 とうとう私は我慢できなくなってしまったのです あの日は、コリンナの誕生日でしたね あなた方夫婦が出掛けた後、 私は電話でコリンナを呼び出しました 〝 お母さんから植木の注文を受けた 持って帰れる…

ライターと易者 小さな文鎮 ③

清書作業が終わり、時計を見やると三時間が経過していた。 外はもう真っ暗だ。 いつのまに使っていたのか、学生時代の和訳辞書が膝の上で開かれている。 まったくこいつは……。 僕はタイプライターに目を落としながら大きく息をついた 出来上がった文章を読み…

ライターと易者 小さな文鎮 ②

「家に帰ってから開けたほうがいい。 君が思っている以上に汚い物が入ってるからね」 そう忠告されて言う通りにした僕は、 自宅のデスクの椅子に腰を下ろしている。 ポケットの底に沈み込んでいた文鎮を取り出し、 何となくパソコンの脇に置いてみた。 ……………

ライターと易者 小さな文鎮 ①

広く年輪を重ねた木目テーブルの上、 今し方ほどかれた黒色の包み袋の真ん中に 小さく、白く、何より美しい物体が置かれている。 それを〝文鎮〟だと紹介したこの店の店主である易者に促されて、 僕は手に持ってみた。 すると、 なんとも頼りない重さを手の…

ACT Ⅲ   天竺鼠:ギニーピッグ ―03―

希一達は豊富にある食料にほとんど口を付けなかった。 というよりは喉を通らなかった。 世界の終わりを見たあの日、 荘輔がドアフォンの音量をゼロにしてインターフォンを鳴らなくしたものの 相変わらずノックだけは続いた。 籠城を始めて三日三晩その音に悩…

ACT Ⅲ   天竺鼠:ギニーピッグ ―02―

拳一個分すかした窓を通って シカバネ共の息遣いと生臭い夜風が一緒に吹き込んでくる。 缶詰の鯖を半分食べたところで 希一の胃は残りを受け付けなくなった。 食べ残しにラップをして冷蔵庫にしまう。 窓に歩み寄った希一はカーテンの隙間から外をうかがった…