NIWAKAな綴り士

危険なモノ 奇妙なモノ そういったことに共感し思いついたことを綴ります

ようこそ、新入部員! -07-

 次の日が来るのもあっという間だった。

 本日も教室内の空気に徹し、瞬く間に放課後。

 

 そして私には行き場がない。

 

 最低限それと見えないよう、鞄を下足のロッカーに押し込んだ後、

 仕方なく校内を彷徨(うろつ)き回った。

 相も変わらず廊下に生徒の姿はない。

 中庭へ続く渡り廊下を歩いていると、

 

「ねぇ、難民だよ」

 

 聞こえよがしな声に私はギクリとした。

 が、なんとかその態度が表面に出ないよう抑え込んだ。
 立ち止まらずに声のした方へ視線を投げる。

 運動部らしきジャージ姿の女子が、花壇の縁に並んで座っていた。
 上級生と思われる二人は、目と口が陋劣に歪んでいて、

 見てると胸が悪くなった。

 

 しかし、どうしてだろう?

 

 こういう時、決まって私は怒りよりも、

 悲しいとか怖いっていう気持ちの方が前に出てくる。

 むしろ……。

 そんな自分の弱さに、精神をぶっさきたくなる衝動を覚えていると――。

 

 一人の女子が私を追い抜いていった。

 

 にわかに急ぎ足になった様子で、

 離れ際に見えた横顔は一階の廊下では見かけたことがなかった。

 つい悪い癖が出てしまい、私は目を落として彼女の上履きを見た――白。

 

 ということは二年生。彼女も上級生か……。


 もう一度花壇に方へ目を移す。

 口の端を吊り上げた女子二人の厭らしい目が彼女を追っていた。

 ――同級生かな?

 

 まあ、とにかくさっきの野次は彼女に向けられた言葉だったみたいだ。
 私は目線を前に戻した。

 鞄を持たずに歩く彼女の背中は、肩が上がっていた。

 当然、腹に据えかねているんだと思う。
 しかし、だからと言って言い返せない生き方をしてきたのだろう。
 他学年の私からなら、部活の用事で歩いているようにも見える。

 でも、同級生にはそうはいかない。

 

 あれはおそらく、私の未来だ。

 

 たった今見た陋劣な眼差しを思い出す。

 

 クラス棟に入った私は時計を見た。

 四時まで残り四十五分。

 さしあたり、今日もトイレで過ごすかな……。

 

 続き

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