ようこそ、新入部員! -06-
教室は施錠されてるので、行く当てなんかない。
「カコンッ」と、ししおどしのようにうなだれた私は、
一階に下りて教室横のトイレに入った。
まいったな。屋上は開放されてないからなぁ。
今さら、入部を取り下げるのも間が抜けてる気がするし、
そうは言っても血気盛んな他の部に入るつもりもないし……。
このままでは校内をブラブラするしかなくなる。
『難民』か……。
みんな、そう言われるのが嫌らしく。
ここに来るまでに生徒の姿を一つも見かけなかった。
考え事をしながらトイレ内を行ったり来たりしていると、
あっという間に五分経ってしまった。
誰か来たらきまりが悪いな。
トイレの個室に入って、文庫本を取り出し――私は頭を抱えた。
さっきの司書さんの一瞥が頭をよぎる。
借りた文庫本は長編小説の下巻だったのだ。
仕方なく上巻の予備知識もないまま適当に読み進めていると、
あっという間に時間が過ぎた。
まあ、私にも帰る場所くらいはある。
というわけで、四時を確認した時点で本を鞄に収め、個室を出た。
トイレのドアを開けた時――。
背後で個室が開く音がした。他にも誰かいたようだ。
これはいよいよ反省しなくては。
この私が他の個室の事など気にも留めていなかったなんて……。
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