ようこそ、新入部員! -09-
「ううぅ……消えたいぃぃ……」
恥ずかしいぃぃ……ちょっと熱出るくらいだよこれ。
やばい、変な汗滲んできた。
いくら頭を振り回しても、さっき見たきょとん顔が振り払えない。
むこう一ヶ月は思い出すたびに顔が火を噴きそうだ。
しばらく便座に座って身悶えていると、本当にもよおしてきた。
昨日の今日でなんだか色々と自分が厭になってくるなぁもう!!
深い溜め息を吐きながら私は用を済ませた。
ほどなく入り口のドアが開く音が響いた。
ちょうどしおえたところだ。
こちらの音を聞かれずに済んだ事に心底ほっとする。
同時に少し落ち着いた。
私は身支度を済ませた後、便器の蓋を閉めて座り直した。
ポケットから昨日の文庫を取り出して続きを読む。
…………。
この小説、上巻で何があったか知らないけど、
はたして主人公の高校教師だけが異常者と言えるのかな?
なんか、舞台になってる学校自体がおかしいような――。
ガゴッ!
突然、真横の壁が暴力的な衝突音を轟かせた。
真隣の個室でだ。驚いて肩がすぼまり、うなじが颯(さっ)と冷える。
私は思わず立ち上がって壁の向こうに身構えた。
が――
「おい」
次のアクションは真上からきた。
ばっと視線を上げた私はそのままの姿勢で固まった。
「ぃよう!」
軽快に片手を振っているのは廊下を歩いていた見るからに不良の輩だ。
ちょっ!
ええ?
いやいやいや!
こいつ男子!
ここ女子トイレ!
公衆道徳を思い切りよく蹴り飛ばされ、ショックで口をきけなかった。
「お前、小我裕生(こが ゆうきだっけ? 難民候補だろう?」
――っえ?
いきなり名前で呼ばれた。
誰だこいつ? 知らない!
そんな奴に極めて情緒を優先される空間に土足で踏み込まれ、
フルネームで呼び捨てられた。
私は無理矢理に陵辱されてる気分になった。
その衝撃に最前受けた恥辱的なショックが相殺され、
私はかえって素面に戻った。
同時に突き上げてきた嫌悪感と敵愾心(てきがいしん)で、
無意識に顔が険しくなる。
そんな私を見て、そいつはギッと牙を剥くように笑った。
「そんなお前にぴったりの場所があるんだけど、一口乗らないか?」
続き
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